ブログ

ホーム > ブログ

『それでもボクはやってない』

2007年に公開された周防正行監督による映画。

『Shall we ダンス?』や最近では『終の信託』などで有名な映画監督です。

 

タイトルの映画は痴漢冤罪(を通した日本の刑事裁判の実態と人質司法の問題点等)をテーマとしており、

主人公が電車の中で痴漢加害者と間違えられてから、刑事裁判で一審判決を受けるまでが描かれています。

 

2007年の公開当時、私は法科大学院に通っている最中であり、

その頃劇場で観たときも、話に引き込まれ、圧倒され、

司法の現実(として描かれていたもの)に少なからず衝撃を受け、

当時はより熱心に刑事法関係を勉強するようになった(と信じている)のですが、

昨日、約6年ぶりに、弁護士になってからは初めてこの映画を観て、

改めてこの映画のリアルさと「刑事裁判で忘れてはならないこと」を実感しました。

 

警察官、捜査担当副検事、公判立会検事、裁判官、書記官、司法修習生、

被疑者・被告人とされた主人公、当番弁護士、弁護人(ボス弁とイソ弁)、主人公の母親・親友・元彼女、

被害者の女子中学生、目撃者、裁判の傍聴人などなど、

特に法曹三者ないし司法関係者であれば、映画製作者らがしっかりと調査・取材をし、

実際の日本の刑事手続きの姿を忠実に再現しようとした作品であることがわかると思います。

 

そのため、決して派手ではなく、楽しい作品ではなく、むしろ重苦しい内容であることは間違いないのですが、

だからこそ途中で目が離せない、見ごたえのある映画になっていると思います。

 

主人公(加瀬亮)がラストで言っていたことが印象的で、

 

どこかの裁判官が「真実は神のみぞ知る」と言ったらしいが、それは違う。

少なくとも僕自身、すなわち被告人とされている者だけは真実を知っている。

だから、裁判は真実を発見する場所なんかじゃない。

法廷に出された証拠をもとに、裁判官がとりあえず有罪か無罪を決める儀式にすぎないんだ。

そして僕はとりあえず有罪になった。

だけど僕だけは裁判官にはっきりと言える。「あなたは間違った判断をした」

 

といったようなことだったと思うのですが、

刑事裁判で決して忘れてはならない重大なことを思い起こさせてくれました。

 

裁判は(正当な)証拠に基づいてなされなければならないこと

そして、疑わしきは被告人の利益に

 

一部映画の中の具体的な内容に触れてしまいますが、この映画の中では、

 

警察官が被疑者の初期供述をきちんと録取していなかったり、物証確保を怠っていたり、

主人公を警察官に引き渡した駅員が、主人公に有利な目撃証言をしている証人を無視したり、

被害者の女子中学生が虚偽の証言(ただし、痴漢をされたこと自体ではない)をしていたり、

主人公の家にあったわいせつな雑誌等が証拠としてあからさまに提出されたり、

弁護側が作成した現場再現ビデオが真摯に検討されていなかったり、

 

などなど「不当な」証拠が判断の材料となってしまっていること、

そして疑わしいことはすべて被告人の「不利益に」考慮されていると思われました。

 

もちろん痴漢が卑劣な犯罪であり、加害者を厳正に処罰しなければならないと

思う気持ちは私も捜査機関も裁判官も一緒であると思います。

そして痴漢事件は物証が乏しい等、裁判官の判断が難しいことはよくわかるのですが、

我々弁護士も含め、司法関係者は特にこのような事件では慎重な検討や判断をしなければなりません。

 

『リーガル・ハイ』などコメディ(?)タッチの弁護士ものが人気があるのは、

私も好きでよく見ているのでわかるのですが、

この映画は多くの方にぜひ1度は見てもらいたいと

弁護士としておススメできる作品であることに間違いありません。

 

P.S. 主任弁護人役の役所広司さんは憧れるほどかっこ良すぎます。

 

1

Profile

日々の出来事などを書き綴っています。

Entries

Comment

Archive

2014.04

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30